ゾウムシ類の調査・採集法

2008年6月15日 小島 弘昭


ゾウムシ類の調査・採集法としてもっとも基本となるのが叩き網(ビーティング)です.生木から枯れ木,草本から木本にいたるあらゆる状態の植物(生,枯死,腐朽)のあらゆる器官(根,樹皮下,樹幹,枝,葉,芽,つぼみ,花,果実など)が調査・採集の対象となります.

枯れ木や枝などにつくゾウムシの中には,振動に反応し,強くしがみつく種も少なくなく,叩く際ははじめの強い一打が重要となります.

多くのゾウムシは,特定の植物の特定の器官や状態に依存するものが多いので,ゾウムシと植物の依存関係の傾向をつかんでおくことが,より効率的な調査・採集を行う上で重要です.

背丈の低い草を調査する場合は,叩き網も有効ですが,頑丈な枠(鋼鉄製四折)の網を用いて,根際から力強く草を掬う方法が有効です.

樹木高所(樹冠部)の調査は,これまで不十分でしたが,最近6~7m程度の長竿(通常,磯玉の柄を使用)を用いた調査が行われるようになり,樹冠部を主な生息場所とするシギゾウムシ,ノミゾウムシ,アシブトゾウムシ,ツブゾウムシなどゾウムシ亜科のゾウムシ相が随分解明されました.

図1

生木の樹皮下には越夏,越冬中のゾウムシが見られ,倒木,衰弱木の樹皮や樹皮下にもミツギリゾウムシ,アナアキゾウムシ,クチカクシゾウムシ,キクイゾウムシなど材食性のゾウムシ類が見つかります.

調査場所は,森林や草原環境のみならず,河原や湿地,水田などの水辺,海浜,高山などに及びます.

湿地や水田の水生植物には,水生,半水性のゾウムシ類であるイネゾウムシ科やゾウムシ科のカギアシゾウムシ亜科,サルゾウムシ亜科の一部などが生息します.

海浜の打ち上げられたアマモなどには,ハマベゾウムシ類が生息し,ハマヒルガオやハマゴウなど海浜植物の根際には,ヒョウタンゾウムシ類が見られます.

森林限界以上の高山の石下にはヤマゾウムシ類が生息し,石おこしやプラスチックカップ,缶詰の空き缶を利用したピットホール(落とし穴)トラップが有効です.

森林の土壌中にも多数のゾウムシ類が生息し,ふるいやベルレーゼ,ツルグレン装置を用いて,落ち葉下の腐葉土や地中から採集します.地中深いところの調査はこれまでほとんど行われておらず,今後の調査が待たれます.


詳しい採集法については,以下の文献をご参照ください.

  • - 森本 桂,1983.ゾウムシ類の採集法と標本作製.昆虫と自然,18 (7): 11-13.
  • - 的場 績,2008.ゾウムシ類の採集法.月刊むし,(443): 28-30.